ジャズスタンダードとして君臨する多くの曲には、名演奏がつきものです。

名演奏があるからこそ自分もその演奏を再現したり、別の形に変えてみたくなるのは当然のことです。

その数ある名演奏で最も影響力があるといっても過言ではないのは

Miles Davis です。

マイルスのアルバムに含まれる多くの曲が、ジャズスタンダードとしてジャムセッションのみならずレコーディングやライブの演奏でも取り上げられます。

即ち、マイルスのアルバムのレパートリーから学びそれらの曲をジャムセッションで演奏することは必須なわけです。

ここで改めて、マイルスのアルバムを振り返りながらそれらに含まれる重要な曲たちをチェックしていきましょう。

レッスンではこれらの曲の多くをマスターできるよう、本人の音源や参考音源の演奏のコピー譜などから学びます。

[The New Sounds]

初期のマイルス。このアルバムにはジャムセッション的にはあまり重要な曲はないが、どの曲も有名曲。しいて言えば、マイルスのオリジナルDigが重要か?

Conception 重要度★ ジョージシアリングの曲。中々難しいが面白いコード進行。ほかのプレーヤーによる録音も多い
Dig 重要度★★ Sweet Georgia BrownというMixolydian祭りの曲のスタンダードのマイルス版。 Sonny Stittの名演奏あり
My Old Flame 重要度★ この演奏に限らずまあまあ有名な曲 Stan Getzの後期の録音がいい。その録音にはケニーバロン先生も参加。
It's Only a Paper Moon 重要度★ ナットキングコールのボーカルで有名な有名曲。ボーカル以外はあまりやることは少ないか?

 

[Bag's Groove]

すべてがあまりにも重要なアルバム。全曲が必須のスタンダード曲。

Bag's Groove 重要度★★★★★ 難易度★ Fブルースとしてはあまりにも有名な曲。テーマはもちろん必須で簡単。Fブルースを学ぶ人はまずここから。 名演奏多数あり
Airegin 重要度★★★★★ 難易度★★★★ ロリンズのかっこいい曲。キーはAbだが転調が多い。 Hank Mobley先生とエリックアレキサンダーの演奏がためになる。クリスポッターの若いころの演奏も面白い。
Oleo 重要度★★★★★ 難易度★★★ 言わずと知れたリズムチェンジ=循環のなかで最も有名な曲。 名演奏多数あり
But Not For Me 重要度★★★★★ 難易度★★ キーはEbで単調なコード進行だが2度セブンから始まるのがややイレギュラーでそのあたりをきちんと演奏できるかがポイント。 Dexter Gordonの名演奏あり。Stitt先生はキーがアルトでキーが異なる演奏。
Doxy 重要度★★★ 難易度★ キーがBbでブルース的な要素が強い曲。 フィルウッズ先生の演奏が割と有名。

難易度はこのマイルスのレパートリーの範疇での難しさや転調の数などを含めて相対的に表記しています。

[Walkin']

コルトレーン加入前のバンドでロリンズ先生の熱い演奏が聴けます。

Walkin 重要度★★★★★ 難易度★ Bag'sGrooveと並んで有名なFブルース 名演奏多数あり
Solar 重要度★★★ 難易度★★★ ツーファイブが連続して転調する曲。メロディックマイナーが必要。 名演奏多数あり
You Don't Know What Love Is 重要度★★ 難易度★★★ コルトレーンの演奏でも有名な曲 KennyBarron先生のピアノが秀逸。録音は多数あり。

 

[Cookin']

マラソンセッション四部作の1つ。

My Funny Valentine 重要度★★ 難易度★★ マイルスのバラードと言えばこれ。この演奏よりも後の演奏のほうが有名。 Stitt先生の名演奏がある
Blues By Five 重要度★★★★★ Bbブルース この曲そのものには重要性はないが、この録音は必聴
Airegin 重要度★★★★★ 難易度★★★★ ロリンズのかっこいい曲。キーはAbだが転調が多い。この演奏ではコルトレーンのソロが聞ける Hank Mobley先生とエリックアレキサンダーの演奏がためになる。クリスポッターの若いころの演奏も面白い。
Tune Up 重要度★★★★ 難易度★★★★★ ツーファイブ祭り。コルトレーンのCount Downの元曲。 Sitt先生のテナー、マクリーン先生のライブ録音など
When Lights Are Low 重要度★★ 難易度★★ キーがFの穏やかな曲 ケニーバロン先生の名演あり

難易度はこのマイルスのレパートリーの範疇での難しさや転調の数などを含めて相対的に表記しています。

[Relaxin']

マラソンセッション四部作の1つ。

If I Were A Bell 重要度★★★★★ 難易度★★ キーがFのスーパースタンダード。Ⅱ7がうまく弾けるかがポイント。 Hank Mobley先生の演奏が秀逸。
Oleo 重要度★★★★★ 難易度★★★★★ 言わずと知れたリズムチェンジ=循環のなかで最も有名な曲。コルトレーンのこのソロは非常に重要かつ名演。 名演奏多数あり
It Could Happen To You 重要度★★★★★ 難易度★★★ Ebのキーの名曲。比較的アドリブしやすい曲。Anotherなどに近いコード進行。 Dexter先生の名演があるが内容はあまり参考にならない?
Woody'n You 重要度★★★ 難易度★★★★★ キーがDbの難曲。ツーファイブ祭りがDbのキーででてくる。マイルスのレパートリーの中では最も難しいかも?中~上級者向け。 ゲッツ先生が50年代に名演を多く残している。

 

[Workin']

マラソンセッション四部作の1つ。

Four 重要度★★★★★ 難易度★★★ マイルスの名曲。Ebのキーで、ツーファイブが多く出てくる。 このコルトレーンのほか、ライブ音源多数あり。エリックアレキサンダーの演奏が秀逸。
In Your Own Sweet Way 重要度★★★★ 難易度★★★★★ 本家ブルーベックよりもこの演奏のほうが有名。スローだがツーファイブ祭り。 ケニーバロン先生の名演あり。
The Theme 重要度★★★ 難易度★★★ リズムチェンジ=循環のテーマだが、エンディングとして使われるようになったのもこの演奏から。テーマはぜひ覚えておきたい。
Half Nelson 重要度★★★★ 難易度★★ ダメロンのLady Birdの別メロディー。ツーファイブ祭り。 Hank Mobleyの演奏が秀逸。

難易度はこのマイルスのレパートリーの範疇での難しさや転調の数などを含めて相対的に表記しています。

[Steamin']

マラソンセッション四部作の1つ。

Surrey with the Fringe on Top 重要度★ 難易度★★ 録音は多いが実際に演奏されることは少ない印象。しかしスタンダード曲として聞いておく必要はあるだろう。 キャノンボールアダレーがストリングス集で演奏している。
Salt Peanuts 重要度★ 難易度★★ いわゆる循環的な曲。パーカーの時代に良く演奏されたが完全なリズムチェンジではないためにセッションではあまりやらない。循環の参考音源として聞くのがいいだろう。 パーカーとガレスピーの録音多数あり
Well, You Needn't 重要度★★★ 難易度★★★★★ モンクの名曲。半音あがったりするのがイレギュラーで難しいがこれが出来れば中~上級者。 ウイントンマルサリスの名演あり、ケニーバロン先生もいい演奏があります。
When I Fall In Love 重要度★★★ 難易度★★ バラード。オーソドックスなコード進行で演奏しやすい。 ハンクモブレーとリーモーガンの名演がある。

[Round Midnight]

マイルスとコルトレーンのアルバムの中ではかなり完成度が高いアルバム。マラソンセッションには荒さが目立つのに対し、このアルバムの演奏すべてが洗練されている。

Round Midnight 重要度★★★ 難易度★★★★★ モンク先生の名曲。キーがEbm(Gbメジャー)な上、ツーファイブが激しく動くため難しい。上級者向け。 名演が多数あり
Ah-Leu-Cha 重要度★ 難易度★★ パーカー先生のあまり有名でない曲。
All of You 重要度★★★ 難易度★★★ コールポーターの名曲。
Bye Bye Blackbird 重要度★★★★★ 難易度★ 言わずと知れたドスタンダード曲。初心者にもお勧めの曲。 名演多数あり。
Tadd's Delight 重要度★★★ 難易度★★★ タッドダメロンの有名曲。キーはAbだがコード進行はオーソドックス。 ケニーバロン先生の名演あり
Dear Old Stockholm 重要度★★★ 難易度★ キーがF(Dm)の古い民謡のような曲。ブルーススケールやメロディックマイナーなどマイナーキーのアプローチができるかが鍵。 名演多数あり。

難易度はこのマイルスのレパートリーの範疇での難しさや転調の数などを含めて相対的に表記しています。

[Milestones]

キャノンボールアダレイが参加し、フロントが3管になった初期のアルバム。

Milestones 重要度★★★ 難易度★ いわゆるモードの走りの曲。 アントニオハートとロイハーグローブの名演奏あり。
Straight No Chaser 重要度★★★★★ 難易度★ Bag'sGrooveと並んで有名なFブルース 名演多数あり。

 

[1958 Miles]

キャノンボールアダレイとBill Evansが参加し、最強メンバーのライブ録音。

On Green Dolphin Street 重要度★★★★★ 難易度★★ ドスタンダードとなったのもこの録音があったからからなのかも。 Jmmy Heath先生の演奏が秀逸。モブレー先生やスティット先生も中々。ケニーバロン先生もバリーハリス先生と良い録音を残している。名演多数。
Stella By Starlight 重要度★★★★★ 難易度★★★★ それ以前はバラードで演奏されることが多かったこの曲もこの演奏でメディアムで演奏されることが多いのかも?コードのつながりが薄くスケールも激しく変わるのが難しい曲。サビのⅥ7で粋なオルタードサウンドが使えうるかが鍵。 名演多数。
Love For Sale 重要度★★★★★ 難易度★★★★ パーカーの演奏などでも有名な曲。キャノンボール名義のSomethin Elseと異なりややテンポのあるアレンジで演奏される。 ケニーバロン先生のトリオの演奏が良い。アルトはヴィンセントハーリングの演奏もある。

[Kind of Blue]

おそらくジャズのレコードで最も売れたアルバム。完成されたモードジャズと、音楽の極みが素晴らしいアルバム。

So What 重要度★★★★ 難易度★★★ モード曲の金字塔
Blue In Green 重要度★★ 難易度★★★★ コード進行とともにこの曲調にあったソロをとるのも難しい難曲
All Blues 重要度★★★★★ 難易度★★ 三拍子のベースラインが印象的な曲

 

[Someday My Price Will Come]

バンドメンバーが入れ替わりつつある過渡期の演奏。このアルバムにはモブレー先生が参加し、コルトレーンと比較され過小評価されがちだがいい演奏をしていると思う。

Someday My Price Will Come 重要度★★★★★ 難易度★★ マイルスのアレンジが有名すぎる3拍子の曲 名演多数。
Old Folks 重要度★★★ 難易度★★ キーがFのバラード。比較的演奏しやすい名曲。 名演多数。
I thought about you 重要度★★ 難易度★★★ たまに誰かが演奏したりする準スタンダード的な曲

 

難易度はこのマイルスのレパートリーの範疇での難しさや転調の数などを含めて相対的に表記しています。

[Seven Steps To Heaven]

新メンバーに移りつつある名作。ハービーハンコックの演奏が斬新過ぎる名作。

Seven Steps To Heaven 重要度★★★★ 難易度★★★ ツーファイブ祭りな曲 スタンゲッツの演奏でケニーバロン先生の演奏が秀逸。
Joshua 重要度★★ 難易度★★★ モードの発展系的な曲。ある程度アウトすること技量が求められるであろうポストハードバップの名曲。 ジョーヘンダーソンやマルグリューミラーの演奏が有名。

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